10年ほど前でしょうか。
日本摂食・嚥下リハ学会で、温かいゼリーの開発に関する発表を聞いたのは。
病院時代、ゼリー食の対応の患者さんたちはいつも冷たいゼリーばかりで、
温かいメニューといえば、全卵蒸し(具なし茶碗蒸し)でした。
今では、ずいぶんメジャーになったゲル化剤ですが、
ずっと以前からメーカーさんたちに希望していたことが実現し、嬉しかったものです。
ただ、この手の商品。
注意しなければならないことがたくさんあります。
温かく出すのはいいのですが、60℃でちょうどよい物性に調整しても、
食べている途中で必然的に温度が下がります。
温度が下がれば、物性的にはかたくなります。
ゼラチンゼリーは室温で溶解し軟らかくなりますが、
これはその逆です。
食べている途中にどんどん物性が変わり、固まっていくのです。
現実的に60℃をキープしながら食べるということは難しいですし、
嚥下障害者の人に60℃での提供が適しているとも思いませんが、
いったいどんな温度で適度な物性になるのか、
試作や試食の段階で、そのあたりをしっかり押さえて濃度を決定していく必要があります。
一方で、酵素入りミキサー粥もゲル化剤が含まれているものがありますので、
温かければ軟らかく、温度が下がればゲル化し始め固まります。
ミキサー粥として紹介されていることも多くありますが、
温度条件により変わることが大きく、
温かいゼリーと同様の課題もあります。
聖隷時代は、このレベルはすべて重湯ゼリーでしたから、
重湯ではなく全粥をそのまま使えるということで、
私は発売当初から、栄養価も含めて
ミキサー粥としてではなく、ゼリー粥としての効果を期待しています。