嚥下食の講演やセミナーでは、必ずきざみ食が適さないということと、
増粘剤の使い方、濃度についてお話しします。
とろみの濃度についての先行研究は比較的高濃度(高粘度)を比較するようなものも少なくなく、
各社商品のイラストも、ポタージュ状などとともに
マヨネーズ状、ヨーグルト状など高濃度の表示もあります。
しかし、私たちは臨床場面で高粘度のとろみは、
逆に口腔や咽頭に残留し、誤嚥のリスクが高くなると経験しています。
一方で、ある程度嚥下障害の治療の経験を持つ先生方でも
まだ高粘度のとろみ状態で勧めてしまっていることがあり、
この現状はどうしたらいいのかといつも悩ましく思います。
土曜日の舘村先生のご講演では、
水と牛乳を飲み比べ、口蓋帆挙筋の筋電図をとっていくと、
水の方が嚥下時の筋活動の割合が高い、と結果が出ていました。
ということは、水よりも牛乳の方が飲みやすいということですよね。
わずかにとろみがついている牛乳の方が・・。
実は数年前、当時県立広島大学の大学院生ととろみについての共同研究をしました。
健常人やデイサービス高齢者に対し、
さまざまな濃度のお茶の官能検査を行ったのですが、
一番飲み込みやすいという結果は、とろみなしの次に作ったかなり低濃度のものでした。
これも舘村先生たちと同じ結果です。
とろみについての誤った常識(?!)を変えるためには、
こうやって少しずつ客観的なデータを積み上げていくことが大切なのだと思います。